当店の葉巻保管のこだわりとは?
葉巻の保管に最も適した木材スパニッシュシダー、これをウォークインヒュミドールのキャビネット全てに使用しています。日本では材料調達が困難なため、材料調達できる海外で家具を製作して、輸入する方法をとりました。
スパニッシュシダーは名前こそシダーですが、杉の仲間ではなく広葉樹のセンダン科樹木です。同じセンダン科樹木には、高級家具材で知られるマホガニーがあります。
「シダー」という名前は、この木の芳香に由来します。杉に似た良い香りがあり、また腐朽・虫害に対する抵抗性が高いことから長年、葉巻のボックス及びヒュミドールの材料として利用されてきました。
スパニッシュシダーの長所である吸放湿性、腐朽抵抗性などを最大限活かすには、無塗装で使用することが重要です。そこで家具製作の際には塗装面を最小限にとどめ、木の無垢部分を最大限確保するよう努めました。また僅かな塗装面についても、JISで安全性の最高基準であるF☆☆☆☆(フォースター)の塗料を使用しています。これは化学物質による葉巻への悪影響を避けるためです。
葉巻を保管・熟成する上での温湿度以外の重要管理ポイント、それは葉巻保管場所を極力空気循環させないことです。
葉巻の風味を決定づける重要な物質、それはタバコ葉に含有される油脂分です。この油脂分の一部には揮発性があり、開放空間で葉巻保管すると、この油脂分が失われていきます。
そのため当店では、葉巻の箱の蓋を閉めた状態で陳列しています。葉巻選びの際に毎回蓋を開ける面倒さはありますが、利便性、販促のメリットよりも、葉巻をベストな状態で保管・熟成することを重視しています。
ヒュミドール内を一定湿度に保つには、除湿または加湿でコントロールする必要があります。加湿には加湿器を使用しますが、当店では気化式と加熱式をミックスしたハイブリッドタイプの加湿器を使用しています。
主な加湿方式
気化式 | 超音波式 | 加熱式 |
肉眼では見えない気化した水蒸気を吹き出す方式。3方式中、最も水の粒子が細かく軽いため、加湿空間内の湿度むらが一番発生しにくい。 | 超音波で作る白い霧を吹き出す方式。霧はほぼ室温のため、加湿器内部に雑菌が繁殖することがある。 また吹き出される水の粒子が最も大きく重いため、部屋の下に湿気がたまりやすい。 | 水を沸点まで加熱して湯気を吹き出す方式。 過熱した水蒸気のため蒸気は滅菌され衛生的。ただし熱を出すのが、温度管理上はマイナス点。 |
当店のウォークインヒュミドールは約15m2の広さがあります。この広さをむら無く加湿するため、そして加湿による雑菌繁殖を避ける観点から、気化+加熱のハイブリッド式加湿器を使用しています。
加湿器は湿度設定が出来ますが、70%にセットして加湿してみると、実際にはあっという間に75~80%まで加湿されます。そして70%を下回ってくると再度加湿され、このサイクルにおいて、葉巻保管にとってマイナスな湿度変動が生じます。
そこで当店では、天候、季節、時間帯などで常に変わる温湿度環境を、店舗スタッフが1日に何度も監視し、湿度コントロールの微調整を行っています。このコントロールは、①加湿エアコンの運転モード及び風向、②2台の加湿器の湿度設定、③サーキュレーターの風向、これらの組み合わせで行っており、経験と勘を必要とする作業でもあります。
これらの厳しい湿度管理により、常時68~69%の一定湿度をキープしています。
当店では葉巻のボックスを閉じて陳列しているため直接的な影響はありませんが、通常の照明は紫外線を放射するため、葉巻に直接ライトが当たっている状態では葉巻の紫外線劣化が進みます。
そのため照明灯は、紫外線を出さないLED照明を採用しています。
世界中のいろいろな葉巻店でウォークインヒュミドールを見てきましたが、意外と暗いウォークインが多いですね。葉巻をしっかり見て選びたい時には、その暗さが困りものだったりします。
当店では、葉巻を選ぶのに十分な照度を確保し、明るいウォークインヒュミドールにしています。
店舗の設計時点から、スモーキングエリアとウォークインヒュミドールの換気系統を分けており、ウォークインヒュミドールは換気量を最低限まで下げています。その理由は、ウォークイン内の湿度変動を抑制することと、葉巻の揮発性油脂分を換気で逃がさないためです。
当店のウォークインに入ると、まずスパニッシュシダーの良い香りが感じられると思います。これも低換気設計によるものです。
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