キューバで最高のハウスシガー(2011年7月渡航時入手品)
2011年7月のキューバ渡航で入手したハウスシガーをご紹介いたします。
ご紹介する葉巻は全て、キューバ現地に行かなければ入手不可能なものですが、その中でも、一般旅行者として入手可能な葉巻とそうではないものとがあります。どのハウスシガーが入手可能なのかはこの記事に書いておきますので、もしキューバに行く機会がある方は、ぜひ足を運んで手に入れてみてください。素晴らしい経験になるはずですよ。
ちなみにハウスシガーとは、Habanos S.A.からリリースされている葉巻とは全く別物の、トルセドールオリジナルの葉巻のことをいいます。キューバのハウスシガーは、もちろん100%キューバ産のタバコ葉のみで巻かれますが、そのブレンドがトルセドールごとに異なります。つまり、タバコ葉のブレンドとヴィトラの組合せによってもたらされる葉巻の個性、これがハウスシガーの醍醐味であり、面白さでもあります。
では初めに、当店ではおなじみとなりつつあるマスタートルセドール「ハムレット」のハウスシガーからご紹介しましょう。
伝説のマスタートルセドール Hamlet Jaime Paredes
(ロメオ・Y・フリエタ工場 1階の葉巻ショップ)
18歳でパルタガス工場で働き始め、僅か3年でマスタートルセドール(葉巻職人最高位の9段)に登り詰めた葉巻界の貴公子ハムレット。職人らしい凛とした厳しさをどこかに漂わせながらも、温かさとホスピタリティー溢れる人柄のハムレット。今回、いろいろと葉巻に関するアドバイスや旅の出助けをしてくれました。
上の写真が今回入手したハムレットのハウスシガーで、サロモネス25本、ロブストエクストラ25本を事前にオーダーしておいたものです。2008年、2010年にもハムレットのハウスシガーを入手しましたが、今回はブレンドを変えてもらいました。そのテーマは、「リスペクト エスプレンディードス」です。
以前のブレンドと今回のブレンドの違いはというと、まずボディーが違います。以前オーダーしたものは、リヘロ(タバコ苗頂部の葉で、最も日を浴びているため風味、ニコチン共に強い)を多めに使ったフルボディーシガーだったのですが、今回はミディアムフルに仕上げてもらいました。
ロブストエクストラ
ハムレットのシガーで外観的に特徴となっているのがフットの仕上げです。ラッパーをフット部で余らせて巻き終えています。
サロモネス
いかがでしょうか、この巻きの素晴らしさ。ラッパーカラー、艶やかな光沢をたたえる油脂分、そして一分の隙もない巻き。火を着けるのがためらわれるほどの仕上がりです。
今回、事前買い付け予約をお申し込みいただいたお客様へは、この特別なハムレットのシガーをプレゼントさせていただきました。特別な日の1本としてお楽しみいただければ、私としては何よりも嬉しいですね。
ハムレットのシガーは、事前のオーダーが必要です。彼の店へ行くと、既に巻き上げられたハウスシガーが少量ストックされていますが、それらは基本的に事前オーダーされた葉巻です。ですので、いきなり店へ行っても買うことは出来ません。
さて次は、クラブハバナの愛すべきマネージャー兼トルセドール エンリケ氏のハウスシガーです。
クラブハバナは年間会員資格1,500CUC(≒1,500US$)のリゾートクラブで、プライベートビーチ、プール、テニスコート、バー、ブティック、そしてヘルスクラブを備えています。
クラブ ハバナ
写真左:Enrique Mons Difurniau
(2011年11月 ロバイナ農園にて)
エンリケ氏は、Habanos S.A.の前身であるCubatabaco時代、彼は18年もの間Head of Quality Control 即ち、全てのキューバ産葉巻の品質管理総責任者を務めてきました。そして1990年、5ta y 16のLa Casa del Habanoをオープンさせ、それ以来24年間、首都ハバナで葉巻の販売に務められています。現在はクラブハバナのLa Casa del Habanoに週に2~3回顔を出しているとの事です。幸運な日は、彼に会うことが出来ます。
ラギートNo.2(左) コロナゴルダ(右)
今回入手した葉巻は、上記の5本のみ。キューバは外貨獲得の重要資源である葉巻について、厳重にブランド管理を行っており、正規葉巻店で購入するHabanos S.A.以外の葉巻については、持ち出しが制限されます。現在は1人につき50本まで持ち出しが認められていますが、23本までだった時期もあり、ハウスシガー購入にあたっては注意が必要です。キューバ出国時に、制限本数を超えるハウスシガーやフェイクシガーを所有していると、税関で没収されます。
クラブハバナのハウスシガーも本当はもっと買いたかったのですが、後日スケジュールで、とあるハウスシガーの入手を目論んでいたため少量の購入となりました。この店のハウスシガーは、一般観光客でも購入することが可能です。
次は、世界中のキューバ産葉巻愛好家の虎の穴とも言うべき、シガーフリークの巣窟「コンデ・デ・ヴィジャヌエバ」のハウスシガーです。
マスタートルセドール Reynaldo Gonzalez Jimenez
(ホテル コンデ・デ・ヴィジャヌエバ)
マリオにそっくりなおじさんことレイナルドですが、彼も卓越した技術と感性を持つマスタートルセドールの一人で、彼の葉巻を薫らすために世界中からファンが訪れます。ここのLa Casaはちょっと変わっていて、店全体がウォークインヒュミドールになっています。なので、店内に入った瞬間から20℃の世界となるわけで、キューバで最も涼しい店の一つであると言って間違いないでしょう。
彼はメルカデレス通りNo.120の葉巻店も面倒見ているため、コンデ・デ・ヴィジャヌエバのLa Casaを留守にすることもありますが、キューバ滞在されたなら是非、レイナルドのショップ訪れてみてください。私イチ押しのお勧め空間です。
今回もレイナルド自身が実演で葉巻を巻いて見せてくれ、その巻きたての葉巻をプレゼントしてくれました。レイナルドの手から華麗に生み出される葉巻は、何度見ても圧倒されます。さて彼のハウスシガーですが、今回はコロナゴルダ1種類に絞って買い付けて来ました。
右から11本が7年熟成のコロナゴルダ、左端の1本が目の前で巻いてくれたロブストです。左から2番目の葉巻はプレゼントでもらいました。実はコロナゴルダ11本のうち何本かもプレゼントしてくれたものなのですが。
レイナルドの葉巻もハムレットと同様に、ラッパーをフットで余らせる巻き方が特徴です。
なぜコロナゴルダに絞ったかと言うと、何本か試した中でこれが最も素晴らしい風味だったからです。彼の葉巻は巻きたてでも素晴らしいのですが、7年という熟成期間はそれをさらに上質なものへと昇華させるのに十分な年月だったようです。
最後にご紹介するのは、今回の渡航でどうしても手に入れたかったハウスシガーです。渡航前にメールマガジンでも書いた
「今回の渡航で狙っている葉巻があります。ただしこれは通常、販売されていないため、購入することができるのかできないのかすら不明です。」
その葉巻とは、ベガス・ロバイナ農園のハウスシガーだったのです。
なぜそれほどにロバイナ農園のハウスシガーが欲しかったのか、それは通常のHabanos S.A.製シガーを越える、圧倒的に素晴らしい風味のシガーだからです。まだアレハンドロ翁が健在だった2008年の渡航の際、私はこの農園のハウスシガーを、アレハンドロ翁、孫のヒロシ、ホセ、通訳の清野氏(トラベルボデギータ通訳)ら4人と共に薫らしました。その時の衝撃は、今でも鮮烈に記憶に残っています。それほど素晴らしい葉巻だったのです。
その時に持ち帰った農園のハウスシガーは、わずかに2本でした。1本はみんなと薫らしたラギートNo.2に近いヴィトラのもの、もう1本は農園専属のおじいさんトルセドールが目の前で巻いてくれたロンズデールサイズの葉巻でした。この、あまりに貴重で贅沢な葉巻を、私はこの3年間ずっと忘れることができませんでした。
ロバイナ農園の専属トルセドール マクシミーノさん(愛称マミーノ)
(ベガス・ロバイナ農園)
このおじいさんが、ベガス・ロバイナ農園専属のトルセドール マクシミミーノさん(76歳)です。3年前と変わらぬお元気さで、彼は葉巻を巻くだけでなく、今も現役で、竹馬に乗りタパドをかける仕事をされています。
少し話は長くなりますが、今回ロバイナ農園でどのような経過でハウスシガーをを入手したのか、記録としてここに書いておこうと思います。というのも実は、上の写真を撮ったあと、今回も2本だけしか農園のシガーはいただけなかったのです。その2本とは、私への1本と同行した当店スタッフへの1本として、目の前で巻いてくれた葉巻でした。
私は農園の葉巻を買えないか現農園主であるヒロシに尋ねました。しかし、農園で葉巻を売ることは政府から許されていないので、販売はできないとのことでした。どこへ行っても自由な空気のため、つい忘れそうになりますが、やはりこの国は資本主義経済ではないのです。
しかし私は想いをヒロシに伝えました。3年前、アレハンドロ翁を囲んでみんなで薫らした葉巻が、どれほど素晴らしく心に残っていたかを。そしてここへ再び訪れてヒロシへの再会と共にどれほど農園の葉巻を楽しみにしていたか…。
私と直に会った方はご存じだと思いますが、私の葉巻へ対する情熱は尋常ではありません(笑)
言語と国境を越えて、それはヒロシにも伝わったのです。この話をしている時、我々は農園近くのレストランで食事を取ったあと話をしていたのですが、話の途中、私に断りを言って、ヒロシは農園に電話をかけました。彼はスペイン語しか話さないため、私には何を話しているのか分かりませんでしたが、その数分後…、農園の家族がレストランに現れ、ヒロシに何かを手渡したのです。そしてそれは、私の想像をはるかに超える、超弩級の葉巻だったのです。
ご覧いただきましょう、これが今回の渡航でロバイナ農園にて手に入れたハウスシガーの全てです。
一度目の電話の後、ヒロシの手にあった葉巻は、上の写真の一番左の葉巻でした。比較対象がないと分かりにくいと思いますが、この葉巻の大きさに、私は度肝を抜かれました。
超弩級の農園ハウスシガーを手にする、ロバイナ農園最高責任者のヒロシ
ベガス・ロバイナ農園のハウスシガー「ラ・ベスティア」
この葉巻、リングゲージは何と62!近年リリースされたコイーバ ベイーケの最大ヴィトラでもリングゲージ56です。Habanos S.A.の葉巻で最も太いレギュラーヴィトラはサロモネスのリングゲージ57ですから、それを大幅に上回る桁外れの太さです。そしてその太さにあって、長さはチャーチルを超えるのです。
当然このようなヴィトラは一般にはなく、農園のオリジナルヴィトラでその名を「ラ・ベスティア(La Bestia)」と言います。意味は「野獣」です。実にヒロシらしいネーミングです。そしてこれに対し、美女という名の細いヴィトラも農園のハウスシガーには存在するそうなのですが、こちらは今回お目に掛かることが出来ませんでした。
とにかく手に持ってみると、思わず笑ってしまいそうになるような大きさです。すりこぎに近い大きさと言ってもいいですね。
写真のウォーターフォードクリスタルの灰皿は、かなり大きなものですが、ラ・ベスティアを置くと小さく見えてしまいます。この葉巻にピッタリくるような灰皿とはいったいどんな大きさなのでしょうか。
こうして葉巻についてヒロシと熱く語った2時間でしたが、途中でまた農園からレストランに葉巻が届けられました。それがラ・ベスティアの右にある4本の葉巻です。全部で11本あるうち右側の6本とは明らかに仕上がりが異なります。ラ・ベスティアなどはベイーケを越えるようなラッパーのスムースさです。さすがはベガス・ロバイナ農園です。
右側の6本のうち2本はすでに書いた、我々のために目の前で巻いてプレゼントしてくれたものだったのですが、農園を後にしようとした時、小屋から飛び出してきたトルセドールのおじいさんマミーノに呼び止められました。何と、さらに4本の葉巻を、急いで私のために巻いてくれたというのです。これには本当に感激しました。葉巻にかける熱い想いと優しさの同居する人たちが集う場所、それがベガス・ロバイナ農園です。そしてピナール・デル・リオにある無名の農園も、ここロバイナ農園と同じように、葉巻への熱い情熱を持った人々が、最高のタバコ葉を栽培してくれているのです。
上の写真のコイーバは、エスプレンディードスです。ラ・ベスティアの大きさがわかっていただけるでしょうか?
さて、葉巻についての様々な話をヒロシとした中で、私はロバイナ農園のハウスシガーの美味しさの秘密について、彼に尋ねてみました。理由の一つとして彼が教えてくれたのは、タバコ葉の熟成期間でした。通常のキューバ産葉巻は1~2年のタバコ葉熟成期間を経て、葉巻として巻かれます。それに対しロバイナ農園のタバコ葉は最低3年熟成してからでないと巻かないとのこと。さらに、3年熟成の葉を巻いてみて熟成が足りなかったら、さらに熟成させるそうです。なるほど、通常品と違うわけですね。ちなみにロバイナ農園で栽培されているタバコ葉は、100%ラッパーです。ですが、農園のハウスシガー用として極々少量、タバコ・デル・ソル(フィラー、バインダー用のタバコ葉)も栽培しているのだそうです。
そしてもう一点、大きくはないけど理由があるのだとヒロシは言いました。しかし、それは秘密だとのこと。キラキラした眼で、その秘密を言いたくてたまらないといった表情のヒロシでしたが、私はあえて尋ねませんでした。何故なら、解き明かす楽しみを次回に残しておきたいと思ったからです。
それというのも、今回ヒロシとの対談の中で、彼は私にこう言ってくれたのです。
「次回はいつキューバに来るんだ?その時は、是非農園に何日か泊まっていけよ。そしてタバコ葉を一緒に収穫したり、葉巻を巻いたり、農園のシガーをバンバン吸いまくったりしようじゃないか。みんなでやるロングアッシュスモーキング対決も楽しいぞ!」と。
これ以上ないオファーでした。身に余る光栄と感じました。あのベガス・ロバイナ農園で、タバコ葉をベグエロ(農夫)たちと共に収穫し、葉巻を巻き(実現すれば私にとって人生初の経験です)、この素晴らしいシガーをヒロシのファミリーと共に薫らせまくるというのです。そしてヒロシは言葉を続けました、「次に来る時は、前もって連絡してくれ。そうしたら、今度はラ・ベスティアと美女を25本ずつ巻いて用意しておくから。それはプレゼントするよ。」と。
私はキューバ産葉巻の輸入販売以外に、もう一つ事業を持っている都合上、キューバ渡航は毎回夏になってしまっていたのですが、ついにタバコ葉の栽培期にキューバへ行かなくてはいけなくなったようです。11月に開催されるパルタガスフェスティバルにも、パルタガス工場のマネージャーから招待されたことですし、今年の秋、それに合わせて何とか渡航したいですね。
ロバイナ農園について一つ補足しておきます。フレンドリーな性格の農園主ヒロシですが、いきなり農園を訪ねても会えません。何故なら社会主義国家であるキューバ共和国において、ロバイナ農園も政府の管理下にある施設だからです。農園にはタバコ葉栽培に関する自由が政府から与えられていますが、あくまでも政府管理下にある施設です。外国人がアポ無しで訪れることはできないのです。
前回私が農園を訪問した際も、同じ日に、スイスから来た市長がドン・アレハンドロに会おうとノーアポで訪問しようとしたそうです。ですが、あっさり断られて農園に入ることも出来なかったと、ホセが当時笑いながら話していました。私がアレハンドロ翁に会えたのは、ホセがいたからだったのです。
この記事を読んで、勇んでロバイナ農園に行こうとする方がおられるかもしれませんが、このような実状ですので、その点は十分ご理解下さい。
さて、2011年7月のキューバ渡航で入手したハウスシガーをご紹介してまいりましたが、いかがでしたか?これらの葉巻がどのような味わいなのか気になるところだと思います。でもそれは、薫らしてみた人だけが知っている秘密にしておきましょう。
これら私にとって宝物とも言える葉巻は、私の手元にあります。吸ってみたいというご要望にお応えすることはできないと思いますが、ご覧になりたい方は、ご来店のうえ私に直接お申しつけ下さい。
番外編 いろいろな店でプレゼントされた葉巻
ハウスシガーもいろいろプレゼントされたのですが、実はいくつかの葉巻店でこんな葉巻もいただきました。エスプレンディードス8本って、よく考えると凄いですね。どれもラッパーの艶やかさが凄いんです。
この記事をアップしたら、1本くらい灰にしてもバチはあたりませんよね?
はじめまして、興味深くブログを拝見しております。大変勉強になります。
来週末、キューバに渡航予定であり、その際にハウスシガーの購入を検討しております。そこで事前にハウスシガーについての情報をウェブで調べていたところ、こちらにたどり着きました。
一点質問があります。ハムレット氏のハウスシガーを購入したいと考えていますが、事前のオーダーが必要とのこと。可能なら是非購入したいのですが、事前にオーダーするためには、どうすればよいのでしょうか。
ご回答いただければありがたいです。よろしくお願いします。
ご質問、ありがとうございます。
キューバから帰国後、仕事の処理で忙しくしておりお返事が遅くなりました。
ハムレットのシガーですが、面識の無い一般観光客としてオーダーをすることは極めて難しいかと思います。特に最近は、アメリカでの新規葉巻ブランド立ち上げで頻繁にアメリカを訪問しており、キューバで会うのもなかなか簡単では無い状況です。まず親交を深め、その上で頼んでみるほか方法はないと思います。