ベガス・ロバイナ農園訪問 3回目
2011年11月編 2日目
2011年11月11日~20日の10日間、キューバへ行ってきました。今回は、ピナール・デル・リオのベガス・ロバイナ農園へ2日間訪問し、その後パルタガス・フェスティバルに参加しました。
このレポートでは、3度目の訪問となるベガス・ロバイナ農園で過ごした2日間の体験の2日目を、写真と動画でご紹介します。まずは、一泊したピナール・デル・リオの朝の風景から。
農園で出会う人々とは不思議と、昔から友達だったかのような心地よいアットホーム感があり、また最高の 葉巻の香りに包まれながら、ついつい朝から夕暮れまで話し込んでしまいます。「葉巻」というたった一つのものを介して、一気に立場や国境を越えて繋がってしまうのですから、これは本当に凄いことだなと思います。
今回、2日間の滞在でしたが、2日目も例の茅葺き小屋で葉巻を薫らしつつ、そこで出逢った人たちと会話を楽しみのんびりとした時間を過ごしていたところ、あっという間に夕暮れ間近になってしまいました。しまった!!この時期の農園の様子を案内してもらって写真に収めておかないと!と、慌てて農園を見学させてもらった次第です。
ロバイナ農園で収穫されたタバコ葉のみで巻かれた、ある意味、真のベガス・ロバイナ シガー
写真 左:キューバ在スイス大使館の外交員 中央:CubanCigar片岡 右:ロバイナ農園通訳兼ガイド イバンさん
写真中央の男性はスイスの弁護士で、ロバイナ農園伝統のとある葉巻の巻き方について、早く世界で特許を取るべきだ!!と熱く語っていました。しかし、キューバでは個人で特許を出願することは不可能なのです。
ヒロシは最後まで笑顔で「そうですね。」と相づちを打っていましたが、「実のところ、それは出来ないんだ」とは一度も言いませんでした。
先進資本主義社会に生きる我々は、世界中から多くの情報を得る事ができ、またその中で多様な価値観があることを知りながら、時として、他国の文化を知りもせずに、こうも自らの価値観を押しつけてしまうものなのかと思った瞬間でした。この時のヒロシの対応は大人でしたね。キューバ在日本人の通訳さんはキューバ事情に詳しいので「スイス人、わかってないわね~」と呆れ気味。
日も暮れかかってきたところで、慌てて農園見学スタートです。
このハウスは、タバコの種を蒔き発芽・育苗を行う苗床
国営タバコ農園の育苗施設は屋根を設けていない場合が多いそうだが、ロバイナ農園は屋根を設けている。何故かというと、育苗の潅水を天候まかせにせず、適切にコントロールするため。当然、毎日1~2回の潅水手間は増えるが、それがロバイナ農園の伝統。
苗床の土壌。定植の畑よりも、堆肥の混合量が多いとのこと。
2011年11月作付けのロバイナ農園の主要栽培品種は、コロホ98とのこと。昨年はクリオーリョ99だった。パネルの日付は、種蒔きをした日。
苗の高さ15cm程度になるまで間引きを行いつつここで育てられ、畑に移植される。
潅水のために地下水をくみ上げるポンプ小屋
一日に2回潅水を行う。ある程度まで苗が育つと、一日1回に変更するとのこと。
明日から苗の植え付けで、すっかり準備が整った畑。苗植え後、ロバイナ農園の耕作面積17ヘクタール全てで、直射日光を遮るための綿布(タパド)を張る。タパドを通した柔らかい日光を浴びて育つタバコ苗は、葉脈の少ない、薄く滑らかな葉に育つ。そして収穫されるカパは、葉巻本数にして900万本分にもなるとのこと。
土が柔らかくなるまで充分耕し、うねを作る。土には8月に馬糞を主とした堆肥を混ぜ休ませていたとのこと。土壌を大切にし、天候に気を配り、タバコの生育に最も適した植え付け日を決める。ヒロシ曰く、「カパ(ラッパー)は葉巻の服に当たるものなので、常に完璧ではならない。完璧な葉を育てる為には、厳密な植え付け日、収穫日を管理しないといけない。」とのこと。
手作業により、苗を植えていきます。一年の中でも、植え付けから収穫にかけてが最も人手の掛かる時期で、住み込みの農夫が45人~70人で作業にあたる。
ロバイナ農園の畑の土は、ブエルタ・アバホでよく見られる赤土の色よりも黒っぽい色をしている。恐らく、100年以上この土地を耕し続けてきたロバイナ家の、土壌改良の結果と思われる。
2011年時点で、ロバイナ農園のカサ・デ・タバコは全部で5棟。その内1棟は、機械を使用して温湿度管理が行えるシステムを備えている。温湿度を管理するため、建物内部には各所にウレタンフォームが吹き付けてある。
通常のカサ・デ・タバコと異なり、窓の開閉を行わないため電気照明が付いている。昨年、2010年まではテスト運用を行い、2011年から本格運用を開始したとのこと。元々は1980年代以降に国営農場で導入された設備だったが、テスト運用の結果、効率的且つ品質の高いキュアリングが行えたため、機械設備をヒロシが買い取って導入したとのこと。ヒロシは、地球温暖化により世界的に気候が変わって来ていることも視野に入れ、導入を決断したそう。恐らく、個人農園でこの設備を所有しているのは、ベガス・ロバイナ農園だけ。
収穫後タバコ葉に糸を通した束を吊るすクーヘ(4mくらいの長さの棒)。一般的に、マングローブがよく使われる。1本のクーヘには、100~150枚の葉が吊される。このカサ・デ・タバコでは、2500~3000竿でキュアリングが行える。
建物内部の床に設置されたダクトの排気口から、温湿度管理された空気が吹き出す。この排気口は場所場所で個別に開閉でき、建物内全体を一定の温湿度に保つ。伝統的な自然換気の方法だと約50日間掛かかるキュアリングが、このカサ・デ・タバコでは約半分の25日間で仕上り、時間の節約にもなる。大型機械が隣接する別棟にあり、電源を実際に入れて貰うと“ブォーン”という送風音と共に、やや暖かい風と湿気を感じました。
小屋内の壁には断熱性を高めるため、ウレタンフォームが吹き付けられています。このカーサ・デ・タバコでは、タバコ苗からの収穫部位を混ぜてキュアリングするような事は避け、同一部位のみのキュアリングを行うとのこと。
お馴染み、マミーノさんのハウスシガー小屋です。
ベガス・ロバイナ農園訪問も3回目となり、今回は実際に葉巻を巻くことに挑戦させてもらいました。まずは、マミーノさんにお手本を見せてもらいます。
いつも以上に、注意深く手順を見守ります。トリパ(フィラー)の構成は、ボラード3枚、セコ1枚、リヘロ1枚の順で取った様子。そして手の上で重ねた葉を握り込む際は、最後に重ねたリヘロが葉巻の中心に来るようにして、葉巻の太さに握っていきます。
葉巻を巻く際は、必ず前へ前へ、押すように巻いて行く事もポイントとのこと。
さて、いよいよ私も、人生初の「葉巻を巻く」という体験にトライします。フィラーは思った以上に乾燥していて、握るとバリバリと音を立てます。これを握って巻いていっても大丈夫?と思うのですが、大丈夫なようです。ちゃんと巻けました。
スタートが遅い時間だったため2本しか巻くことが出来ませんでしたが、巻き終わった葉巻をヒロシに見せたところ…「ペルフェクト!」とお褒めの言葉が。ナイスリップサービス!(笑)
当店のクオリティー・コントロール Lisa も巻きました。以下、彼女のコメントです。
Lisa:後日、動画を見てみると葉巻を、前へ押すように巻いて行く事もポイントを忘れて、前後にコロコロしていますね。巻き上がった葉巻は日本に持ち帰りお店のお得意さんプレゼントしたところ、「ドローも良くて上手に巻けているし、今までに無い味わいの変化を楽しめたよ!」と大変喜んで頂けました。実は私の巻いたバンチ(モルドで型押しされたバインダーまで巻かれた葉巻)は、既にマミーノさんが巻いてプレス完了していた物で、カパ(ラッパー)のみ私が巻いものです。お伝えそびれちゃいました。
このあとは、ちょうど日も暮れた頃、ヒロシ達に別れを告げ、ハバナまで約2時間半の道のりを急いだのでした。翌日からは、パルタガス・フェスティバルです。下の動画は、ヒロシとの別れの際に写真を撮ろうとした時のオマケムービー。
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