葉巻の喫煙表現

最近方々で目にする「葉巻を喫煙すること」の言葉の表現について少し考えてみたい。
葉巻を喫煙することを愛煙家それぞれの言葉で表現しているのだが、思い出すだけでも結構種類がある。

・葉巻を噛む
・葉巻を飲む
・葉巻を吸う
・葉巻を嗜む
・葉巻を薫らせる
・葉巻を試す
・葉巻を吹かす(噴かす)

…などである。

私が普段使う言い回しとしては「薫らせる」「吸う」が多いが、「吸う」という言葉を使うときは、自分でもややしっくり来ない感覚を抱きつつ使っていることが多い。と言うのも、葉巻は実際のところ「ふかす」ものであり「薫らせる」ものだからである。それでも「吸う」という表現を使うのは、葉巻の経験がない人に話すには「吸う」という表現の方が馴染みやすいだろうと思うからである。

紙巻きタバコではほぼ一様に「吸う」と表現されるのに、なぜ葉巻の喫煙表現になると「吸う」以外の表現が多く使われるのだろうか?
それは恐らく“紙巻きタバコとは違うんだよ”…という葉巻愛好家の自負や、暗に“肺に吸い込んで吸うものじゃないんだよ”というメッセージが込められているからだと推察する。

個々の表現について考えてみる。
まず「嗜む」という表現はどうだろうか?
「嗜む」とは、“好んで親しむ”“愛好する”の意味であり、「酒を嗜む」や「葉巻を嗜む」というように使う。誰かと会話する際「昨日、バーで酒を嗜んでね~」と言うことが無いのは、「嗜む」という言葉が、経験や行動ではなく自らの嗜好を表す表現だからである。なので「昨日はコイーバのシグロIを嗜んだよ。」とか「あぁ、その葉巻は嗜んだことがあるよ。」と言ったりするのは間違いである。

次に「飲む」という表現だが、これは「たばこを飲む(呑む)」という、やや年配の方が使う古い言い回しを流用しているのだろう。この「のむ」という表現は本来“口に入れたものを噛まずに体内に送り込む”ことを表す言葉で、煙を肺に入れる紙巻きたばこでは意味も通じるが、葉巻の場合はやや的外れな表現かもしれない。もし「たばこ」と「飲む」を一対で使うのであれば、葉巻の場合に対になる表現は「ふかす」である。しかし…「ふかす」と言うと、葉巻よりもどちらかというと、パイプをイメージする人が多いのかもしれない。

「噛む」葉巻を噛む…、これは私個人どうもしっくり来ない表現である。確かに、葉巻を口にくわえたままの状態にするとき葉巻を噛むことはある。しかし、多くの葉巻愛好家が知っているとおり、葉巻を口にくわえっぱなしにしたり、やたらと葉巻を噛んだりすると、よほど上手にくわえていない限り吸い口がベチャベチャになって葉巻は哀れな姿となり、唾液で吸い口は詰まってしまい喫煙に困難が生じる。海外の映画などでは、葉巻のヘッドを噛みちぎったりするシーンを良く目にするが、実際これは葉巻を不味くするにはもってこいの方法で、少なくともプレミアムシガーを愛好する人々でこれをやる方は極少ないだろう。どうやら「葉巻」と「噛む」は、あまり相性の良い表現ではないように思える。

こうして葉巻を喫煙する表現について個々に考えてみると、やはり「薫らせる」が最も適した言葉だと感じるが、これはもちろん私の主観である。ちなみに私は今モンテクリストのサブライムを薫らせていて、この実に長くタフな葉巻の友にと葉巻の喫煙表現をあれこれ考えてみたが、やはり「思考する時間」を楽くさせてくれるのも葉巻の良さの一つであることに間違いない。

葉巻を嗜む皆さんは、葉巻の喫煙を何と表現しているだろうか?

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  1. m.coo

      大変面白い内容ですね。まだ葉巻に馴染めていない私も「さて葉巻を全く知らない人には なんと説明しよう?」と思った時もありましたが自分的にも「燻らせる」と言うのが一番シックリする様に思います。
      私の思うのは「燻らせる」の「燻」と言う漢字は「燻製」等スモークされる物に使うと言う事と、何より優雅なイメージが葉巻にピッタリなんじゃないかと思います。
      しかしながら葉巻を全く知らない人に「燻らせる」と言うのは、まだ深く理解出来ていない私が言うと これ見よがしで何か照れくさい気もして(笑)そうゆう場合は専ら「吸う」と分かり易い様に言う事が多いですね。

      葉巻愛好家の方が「燻らせる」と言った言葉には葉巻に対する敬意と愛好心を感じますね

    • C.E.X RIO

        葉巻を燻らせる…という言い回し、確かに躊躇するときもありますよね。でも良いんです、照れずに大いに使って下さい(笑)
        かくいう私も「吸う」と「燻らせる」を使い分けてはいますけど。