エル・ラギート工場 再訪

エル・ラギート

2012年9 月13~ 17日、キューバへ葉巻の買い付けに行ってきました。 13日の夜遅くにハバナ到着、 17日早朝にはキューバを発つスケジュールだったため、現地で動けるのは 14~16 日の実質 3日でした。
トロント発ハバナ行きの飛行機出発が 1時間以上遅れ、夜の11時をまわった頃ようやくホテルにチェックイン。延べ 18~19 時間のフライトの後です。よれよれで部屋に入り、ようやく一息ついてある人と電話で話していた時のことでした。

「ところで、明日の朝エル・ラギートに行くんだけど、一緒にどうですか?」

思わず何か考えるよりも先に「本当ですか!? もちろん行きます!」
と、深夜のホテルの部屋に、私の大声が響き渡ったのでした。

買い付け初日の 14日、10 時過ぎにエル・ラギート到着。今回で 2度目のエル・ラギートです。前回は、今年( 2012年)のハバノス・フェスティバルのプログラムでしたが、今回はフェスティバルのプログラムの時には入れなかった別棟の、デスパリージョ(ラッパーの主脈取り)ルーム、モハ(ラッパーの加湿)ルーム、そしてある意味エル・ラギートの心臓部とも言える、ブレンディングルームにも足を踏み入れてきました。

【ディスパリージョ・ルーム】

ディスパリージョ ルーム

ディスパリージョ ルーム

【モハ・ルーム】

モハ・ルーム

モハ・ルーム

【ブレンディング・ルーム】ブレンディングルーム

ブレンディングルーム

ブレンディングルーム

ブレンディングルーム

ブレンディングルーム

私が過去訪れたことのある葉巻工場は、 H.アップマン工場(ハバナ市内)、ラ・コロナ工場(ハバナ市内)、フランシスコ・ドナティエン工場(ピナール・デル・リオ)と、このエル・ラギート工場の4箇所。もちろん全て、工場内部を見て廻った箇所です。(一般観光で見学できるパルタガス工場だけは、実は後回しになっていてまだなのです)

エル・ラギートもその他の工場も、ただ見学しているぶんには特に明確な違いを感じられません。強いて言うならエル・ラギート工場は、敷地、建物が他よりも美しく広々とはしていますが、葉巻づくりの作業風景としては他の工場と大差ないように見えます。

エル・ラギート
ですが、実は明らかな違いがあります。何かというと、巻かれている葉巻が別格なのです。「何だそんな事か、コイーバを巻いている専用工場なんだから当たり前じゃないか。」そう思われるかもしれません。もちろんその通り、この工場だけは特別なんです。ですが、私が言いたいのはそんな通り一遍の話ではないんです。

過去に何本も、各工場で巻きたての葉巻をもらって吸いましたが、エル・ラギートの葉巻だけは本当に別格です。率直に言って「何なんだこの葉巻は!?」という感じなんです。

何って、まぁそれはコイーバなのですが、でもそれは、恐ろしいほどに凄い旨さです。今回は、まだ発売前のコイーバ・ピラミデスを吸いましたが、ココア、カラメル、ハニーローストナッツ、コーヒーなどの風味が複雑に幾重にも重なり、しかもそれらのバランスが正にパーフェクトなのです。まさに至福のひとときです。恐るべきエル・ラギートです。

また今回は、エル・ラギートの応接室に案内されました。かなり広めの部屋で、ドアを入って左側には重厚なミーティングテーブルが、そして窓のある部屋の奥にソファーセットがあり、その左側にはショーケースがあります。そのショーケースには、コイーバの各ボックスが展示されており、外交官専用ランセロのドレスボックスなども飾られていました。その部屋で巻きたての葉巻を薫らしたのですが、この時ちょっとした新たな発見がありました。

クオリティーコントロールの男性から初めにもらった葉巻はベイーケ 56のノーリングで、実はこれが極めてドロー不良、全然吸えません。もちろん巻きたての葉巻だったのですが、ドロー不良の原因は「葉巻の湿気」です。

簡単に説明すると、タバコ葉は工場で巻かれる際、かなり加湿された状態で巻かれます(特にラッパー)。もちろん、巻いているときに割れたり破れたりするのを防ぐためです。しかし過加湿のまま出荷することは出来ないため、通常 2週間ほどかけて除湿をしていきます。工場から出荷されるのは、この除湿による湿度調整が済んでからなのです。

私がクオリティーコントローラーに「ドローが悪くて、これは全然吸えないよ」と言うと、「ちょっと待って」と言ってどこかへ消えていきました。待つこと数分、彼はまた 1本の葉巻を手に持って現れました。「今度は大丈夫だ」と言います。これも今日巻かれた葉巻なのか聞いてみると、そうだと言います。だったら過加湿で前のと同じく吸えないんじゃないかと私が尋ねると、大丈夫だから吸ってみろと言います。
半信半疑で葉巻に火を着けてみると、何と今度はパーフェクトなドロー。そして先の一本とは比較にならないほど濃厚で豊かな香りの煙です。

先ほどの葉巻との違いに驚き、さっきのとは何が違うのか尋ねてみると、あとからの葉巻は、テイスティング用の葉巻なのだとの答え。なるほど、クオリティーコントロール工程におけるテイスティングは、除湿を待って 2週間後に…というわけにはいきません。何故ならその間にも、そのトルセドールは次々と葉巻を巻いてしまいますから。
私はてっきり、葉巻は巻きたて初日は湿度過多で吸えないと思っていたので、これは新たな発見でした。

そしてその葉巻を薫らしながら、クオリティーコントロールの二人と一緒に談笑。葉巻愛好家冥利に尽きる時間でしたね。

さて、この出荷前のエル・ラギート製シガー、この記事を書いている現時点(2012年10月上旬)で、数はごく僅かですが私の手元にまだストックがあります。私としては、この葉巻の素晴らしさをお客様へもぜひ体験していただきたいと思っていますので、今回これらをプレゼントシガーにさせていただこうと思います。

なぜ私が片道20時間近くもかけて、エコノミー症候群になりそうになりながらでもキューバへ出向き、現地の葉巻を買い付けてくるのか、その理由を最もわかりやすいかたちで表しているのが、これらファクトリーメイドの最もフレッシュな葉巻たちです。手にすることの出来た幸運な方は、ぜひとも新鮮なうちにお楽しみ下さい。

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